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主にテレビドラマや時代劇、アニメの感想文を書いているブログです。

眠狂四郎 円月殺法 第7話「こぼれ花情け無用の無頼剣 -小田原の巻-」

小田原宿への道中、塚本伝九郎(八名信夫)率いる薩摩の刺客に襲われる狂四郎(片岡孝夫)。間髪入れず襲う薩摩くの一・おりん(大川かつ子)も退けたその強さに、調所(安部徹)は「人間の欲が無く、背中には常に死の影を背負っている。それを平然と何とも思わぬ男だ。それが恐ろしいのだ」と評した上で、更に水野忠邦側用人頭・武部仙十郎(小松方正)が江戸を発ったことを気にかける。

復讐に燃える伝九郎は狂四郎に毒矢を命中させる。それを助けたのが小夜(佐藤万理)と伊助(柳川清)の提灯職人であった。小夜は手際良く狂四郎を介抱するが、その鏃が兄にトドメを刺した鏃と同じ物であることを突き止める。小夜は元は目付配下の家に生まれたが、兄は小田原での隠密活動中何者かによって殺害されたのだ。兄を殺した男と狂四郎を狙った男は同一人物。小夜は狂四郎に仇討ち助成を願うも断られ途方に暮れる。

武部と再会する狂四郎。薩摩の隠れ屋敷を調べに自ら出向き、お蘭(松尾嘉代)を差し向け調査。もちろん狂四郎はこれを断るも、小夜と伊助の二人までもが屋敷に潜入しており成り行きから救出することに。狂四郎の忠告を受け入れず命を捨てて仇を討つ覚悟の小夜を想い、小夜の兄を殺害した伝九郎と対峙する狂四郎。円月殺法封じのため二刀流で立ち向かう伝九郎であったが、あと一歩及ばず。何だかんだ言いながら、小夜の恨みを晴らした狂四郎にお蘭も思わず「憎い男だねえ……」と漏らすのであった。

男の美学を見せ付ける今回の狂四郎。看病疲れで眠っている小夜の顔を見つめて「寝顔があまりに美しいので、眺めていた」と歯の浮くセリフ、そして偶然に手と手が触れ合ってしまい小夜の心は陥落。何度も何度も自分の手を触れてみるなど、燃え上がった女心を表現する仕草がいじらしい。その小夜は伯父が蘭方医であったことから、毒矢に射られた狂四郎の手当もお手の物。そして、狂四郎から抜き取った鏃と、兄を殺害した者が射った鏃が同じ物から、犯人が同一人物であると突き止め狂四郎に仇討ち助成を申し出るが、狂四郎の答えはきっぱり「断る」。挙句は一人で仇討ちに臨もうと、死を覚悟で一晩限りの「情け」を求める小夜であったが、これも断る狂四郎であった。

さて、その仇と言うのが薩摩藩弓術指南役の塚本伝九郎。もちろん調所の大将や海老原蔵人とも昵懇で、これを演じるのが八名信夫。相変わらず怖い。でもカッコイイ。薩摩屋敷を探りに来たお蘭とも一戦交えており、これは小夜の潜入がばれたことでお預け。なお、ここでお蘭の小太刀が富田流であることが判明する。調所と蔵人立会いの下での狂四郎との決戦では、事前に円月殺法を観察し、二刀流で胴払いを防ごうと企むも、その後の狂四郎の素早い身のこなしによって額を割られ死亡。この対決を行うセットが、満月が霞み木が植えられ草が茂り傍には小川が流れるものとなっており、色彩の強い画面を作り出していて美しい。結局、小夜のために仇を討ってしまう狂四郎。「女は死ぬために男に抱かれるのではない。女は生きるために男に抱かれるのだ」の言葉を小夜に残し小田原を発つ。

他にも、武部仙十郎やお蘭らによる、今回の旅の目的や薩摩藩の陰謀がもう一度語られる復習のようなやりとりもあり、再確認の意味合いもある回であった。より詳しく言えば、今回の西国十三藩による企ての背景には、十三藩のいずれもが困窮に喘ぐ貧乏藩であり、そこにつけ込んだ調所笑左衛門が密貿易をエサに同盟を結んだ、とのことである。また、狂四郎と調所がお茶を飲みながら駆け引きを行う乙な場面も。毒により看病を受けている間、おりんに狙われる狂四郎の殺陣が非常にスピーディで迫力がある。テンポの良い劇判も良い感じ。

キャスト

眠狂四郎片岡孝夫金八:火野正平武部仙十郎:小松方正調所笑左衛門:安部徹/島本半三郎:関根大学/森田周之助:鶴田耕裕/松浦与一郎:片岡松之助

小夜:佐藤万理/塚本伝九郎:八名信夫/伊助:柳川清/おりん:大川かつ子/源太:徳田興人/弥兵衛:野崎喜孝/彦十:東悦次/人足:久野一夫/侍:佐波安

海老原蔵人:伊吹吾郎お蘭:松尾嘉代

スタッフ

企画 神山安平テレビ東京)/大塚貞夫(歌舞伎座テレビ)
プロデューサー 犬飼佳春(テレビ東京)/小久保章一郎、沢克純(歌舞伎座テレビ)
原作 柴田錬三郎眠狂四郎孤剣五十三次」より(新潮文庫版)
脚本 津田幸於
音楽 岩代浩一
撮影 中村富哉
美術 太田誠一
制作主任 黒田満重
照明 南所登
録音 田原重鋼
調音 本田文人
編集 河合勝巳
装飾 玉井憲一
記録 川島庸子
装置 松野喜代春
進行 大志万宗久
助監督 木下芳幸
殺陣 楠本栄一
特技 宍戸大全
ロケ協力 大覚寺
装置 新映美術工芸
床山・結髪 八木かつら
衣装 松竹衣装
小道具 高津商会
現像 東洋現像所
ナレーター 佐藤慶
制作協力 京都映画株式会社
プロデューサー 佐々木康之
監督 家喜俊彦
製作 テレビ東京歌舞伎座テレビ

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