シティーハンター 第33話「がんばれ海坊主!!ハードな初恋協奏曲」
海坊主が恋をした!相手は美人ピアニストの江梨子。だが彼女は何者かに命を狙われるなど影が付きまとう。彼女の婚約者は政治家の汚職を追うルポライターだったが、過労が原因で他界。彼女はその意思を継いで事件を追っていたのだが、正体を嗅ぎ付けられてしまったのだ。負傷した海坊主は江梨子の言いなりに入院し、冴羽に彼女のガードを依頼。しかし、最後は冴羽と共に政治家連中を懲らしめることに。
事件は解決し、江梨子は日本を去る決意をする。首には海坊主からのプレゼントが。しかし、彼女の心の中には婚約者の存在が消えずにいた。「ごめんなさい……私、今はまだ彼のことを……」「船が出る……早く行きな」
海坊主が突撃してくるシーンで流れる挿入歌「WANT YOUR LOVE(歌:北代桃子)」。
海坊主の恋を描いたエピソード。美樹が登場する前で、更にオリジナルエピソードということで相当自由を利かせた構成となっている。女心を掴む方法を冴羽に請う海坊主の姿など、今後はまずお目にかかれないだけに貴重なエピソードとも言えよう。
江梨子の婚約者は政治家の汚職を暴くルポライターであったが、寝る間を惜しんだ執筆活動により一か月前に過労死してしまった。江梨子が彼の意思を継ぎ事件を追うのは、彼のことをいまだ愛し続けているから。政治家と企業の癒着による汚職事件を追う内に、彼らが密会に利用するレストランを突き止めピアニストとして潜り込んだ江梨子だったが、そこで彼女に惹かれたのが海坊主だったのだ。
結果的に海坊主の恋は実らなかったことになるが、江梨子も海坊主のことを憎からず想っていたようにも取れる。だが、彼女の心の中にはいまだ婚約者の影が強く残っており、海坊主の愛を受け入れることができなかった。桟橋で見送る海坊主、船の窓からこちらを見つめる江梨子に背を向け無言で立ち去るラストシーンに哀愁が漂う。
ギャグシーンを極力抑え海坊主の恋と江梨子の心の闇にスポットを当てた作品。終わって見れば非常に暗く落ち着いた作品に仕上がっているが、これには、星山博之が初期の雰囲気を踏まえて作劇しているのに加え、江梨子役の鵜飼るみ子が一貫して暗いトーンで演技していることが理由として挙げられるだろう。ヒロインがピアノ美人ということもあってかピアノソロの劇判を多用したり、東京の夜景をイメージしたボードを背景に江梨子が自分の心情を吐露する場面など、雰囲気を醸し出す演出も一級。また、出番は少ないが香がウエイトレスとして潜入し、盗聴を行うなどの見せ場も用意されている。青木悠三が係わっているせいか、悪人が『ルパン三世』に出てきそうな顔をしている。
セリフ
海坊主「ピアノって楽器は、キーを叩く指から弾く人の心がそのまま音に出ちまうんだってな……。あんたのピアノの音は、力強くて優しいが、どこか寂しげに聴こえる……ちぃ!ガラでもねえこと言っちまった」*27-28話において、氷室真希が演奏する鎮魂歌に、亡き氷室剛司の演奏を思い出して涙した海坊主。ここでも、心に悲しみを引きずる江梨子のピアノの音色に対して敏感に反応する。海坊主は無愛想で不器用な態度だが、それは非常に鋭い感性を持っていることを隠すための態度なのかもしれない。
冴羽「この図体で入院したってぇからさあ、大方地雷でも踏んづけたのかなあ、と思いきや何のことはない、32口径を肩に撃ち込まれたくらいで大人しく入院とは、さすがのお前も弱いってわけか惚れた女の一言には、なあ海坊主!」
江梨子「この事件を追っていれば、彼がまだ、私の傍にずっといてくれるような気がして……」
冴羽「政治家なら裏の世界のことも詳しそうだが……聞いたことがあるかなあ?シティーハンターと海坊主のことを」
次回予告
冴羽「パパだなんて勘弁してくれよ!俺は花の独身だぜ?きっと何かの間違いだ」
香「じゃあこの子は何なのよ?獠をパパって呼んでんじゃん」
冴羽「だからきっと……ねえ……」
香「ウダウダ言うんじゃない!ぐーたらパパ。子供は嘘はつかないの。だから……動物園行こ?」
冴羽「動物園何でそうなるんだよ?」
香「奈々ちゃんパンダ見たいって」
冴羽「あーあ、早く本物のママに会いたいよ。シティーハンター『衝撃!!獠の父親宣言 寝てる子は起こすな』」
香「絶対見てね!」
スタッフ
脚本 | 星山博之 |
---|---|
絵コンテ | 港野洋介*1 |
演出 | 加瀬充子 |
作画監督 | いのまたむつみ |
原画 | 村中博美/遠藤栄一/山内貴美子/中島美子/からしまひろゆき*2/野田徳幸 |
動画 | 網野佳子/春日久美子/島田悌三/四本忠司/川島由美子/スタジオMAY |
動画チェック | 石井康雄 |
色指定 | 千葉賢二 |
仕上 | スタジオ・ボギー/岡本直子/石丸好美/小川澄子/福島友子 |
特効 | 千場豊(マリックス) |
背景 | 獏プロダクション/本田修/本田利恵/中原英統/平川栄治/西村康浩/服部一広 |
撮影 | 旭プロダクション/長谷川洋一/末弘孝史/福田寛/土岐浩司 |
編集 | 鶴渕映画 |
タイトル | マキ・プロ |
効果 | 松田昭彦(フィズサウンド) |
整音 | 大城久典 |
音響制作 | オーディオ・プランニング・ユー |
録音スタジオ | A・P・Uスタジオ |
現像 | 東京現像所 |
メカニカルデザイン | 明貴美加 |
設定 | 秋山浩之 |
制作助手 | 渡辺葉子/佐藤あさみ |
制作進行 | 藤本容伯 |
文芸 | 外池省二 |
製作担当 | 望月真人 |
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シティーハンター 第32話「獠死なないで!!ハードボイルドマグナム」
冴羽の元に届けられる冴子殉職の知らせ。しかしそれは、要人暗殺計画を察知した警視庁が、冴子を囮に殺し屋を逮捕せんとする危険な策であった。殺し屋の名はマイケル・ガーラント。裏の世界では「世界No.1」と言われるほどの殺し屋だ。
冴子をガードする冴羽の姿に、ガーラントは冴羽を「本物のプロ」と見込んで一対一の対決を申し込む。巧みなトラップと銃の技、そして日の出の時刻と方角までをも熟知したガーラントの戦いぶりに押される冴羽だが……。
冒頭の挿入曲「NEVER GO AWAY(歌:北代桃子)」。
世界有数の石油産出国・キルレア共和国の大統領が表敬訪問のため来日。その大統領を暗殺するために、国際的殺し屋が日本に来るという情報が入った。警視庁は大統領暗殺を阻止するため、大統領が日本に来る前に殺し屋と接触し“ある人物”の殺しを依頼する。そして、現場を押さえ殺し屋を逮捕する作戦に出た。その殺し屋のターゲットこそ、警視庁の女刑事・野上冴子であった。相手が世界的な殺し屋であるマイケル・ガーラントと聞き一度は驚くも、冴羽は冴子護衛の依頼を引き受ける。
ナンパのフリをして油断させ、一瞬の早撃ちで牽制する冴羽の腕前に「本物のプロ」としての実力を垣間見たガーラントは、かつての仲間でもある海坊主を介して正式な「勝負」を依頼する。トラップの名手でもあるガーラントは、決闘の場である廃ビルで入念にトラップの準備をするが、一方の冴羽は、ただ星空を見上げているだけだった。
決闘が始まる。冴羽はガーラントのトラップを潜り抜けながら間合いを詰めるも、ガーラントも無線マイクで冴羽の気を逸らしトラップに追い込むなど抜け目が無い。ガーラントが仕掛けた手榴弾のトラップによって起こる爆発に、思わず飛び出してしまう香。兄の時のように、身近な人間を知らないうちに失いたくないという想いの強さが、決闘の場に足を走らせる。ガーラントは冴羽を庇う香を撃てなかった。決戦の場所で朝日を背にするガーラント。冴羽は致命的なミスを犯してしまうも、思い切ってガーラントの頭上に飛び込んで行く。頭上から落ちてくるものを仕留めるのは射撃のプロでも難しい。そこを突いた決死の作戦であった。一発でガーラントの心臓を撃ち抜かなかったのは、ガーラントが冴羽を庇う香を撃たなかったから。「プロの世代交代」を感じたガーラント、引退し本国へと帰っていった。
シティーハンター中盤において、最もハードな作品と言って良いかもしれない。原作からの抜粋ではなくオリジナルの作品でありながら、サブキャラクターである海坊主の過去に独自の肉付けをするなど作品に厚みを持たせている。雨、夕暮れ、夜……と作品内の生活時間帯である背景描写が暗く、またふざけたシーンが極力抑えられたハードな色合いも手伝ってか、全体を通して非常に落ち着いた内容に仕上がっている。
ゲストのマイケル・ガーラントの描写も、冒頭から「世界でNo.1の殺し屋」と散々持ち上げているが、文芸レベルではなくその実力をしっかりと描いており、評判倒れのキャラクターになっていないところにスタッフのこだわりと意識の高さを感じる。ガーラントの声は池田勝。戦闘シーン、「WANT YOUR LOVE(歌:北代桃子)」と「FOOTSTEPS(歌:北代桃子)」の挿入のタイミングが絶妙。
なお、このガーラントとの一戦は、最終回にも言及されている。
ゲスト
マイケル・ガーラント
国際的な殺し屋。ある一定レベル以上のスイーパーからは「世界でNo.1の殺し屋」として知られており、裏の世界において世界的な知名度を誇る。今回、キルレア共和国大統領暗殺を依頼され来日。キルレア共和国は小さいながらも世界有数の産油国であり、大統領は諸外国よりVIP待遇でもてなされる人物だが、そんな世界の大物の暗殺依頼を受けるレベルの殺し屋である。もちろん、日本にもコネクションを持ち情報網を確立している。冴羽の情報も、都内にある子飼いの情報屋「odyssey」で確認した。
自分と同じ「プロ」のニオイを持つ相手を見つけたとき、暗殺依頼よりもまず決闘を優先させる傾向にあり、決闘の前には精神を落ち着かせるためかタキシードを着てピアノを弾く。物心がついたときから銃を握っていたようで、このことから、冴羽と同じ傭兵部隊出身であることが予想される。なお、卑怯な真似は一切行わず、自らの実力を以って正々堂々と対峙する正道の殺し屋であり、東京の繁華街ではチンピラに絡まれている儚い花売り娘を助けている。
冴羽との対決を経て世代交代を痛感したガーラントは、日本での仕事を行う前に引退を決意。冴羽はこの事により、計らずも「マイケル・ガーラントを引退に追い込んだ男」として、世界的知名度を得ることとなる。
海坊主とガーラント
ガーラント「遅いな……。こいつが武器だったらユーは死んでる」
海坊主「昔の仲間を信用しただけさ」
ガーラント「仲間を信用し過ぎて死んでいったヤツは大勢いる」
海坊主「そいつらは信用する相手を間違えたのさ」
ガーラント「ふふ……久しぶりだな」
海坊主「あの時以来だ。突然の連絡でビックリした」
ガーラント「頼みがある。冴羽獠を知っているか?」
海坊主「少しは」
ガーラント「グッドだ。こいつをミスター冴羽に渡して欲しい」
海坊主「……赤い薔薇……!冴羽と会ったのか?」
ガーラント「スコープを通してな」
海坊主「あんたのスコープに入ったのに、冴羽は生きているわけか」
ガーラント「彼は本物のプロだ。正式に勝負がしたい」
海坊主「俺に立ち会えと?」
ガーラント「うむ」
*海坊主はトラップの名手だが、そのトラップはガーラントから教示されたものであることがこの話で明かされる。海坊主は氷室剛司の部隊の他にも、ガーラントとチームを組んでいた時期があったということになる。また、海坊主は依頼人との待ち合わせに「赤い薔薇」を使うが、これも師であるガーラントの影響があるのかもしれない。
セリフ
冴羽「マイケル・ガーラント!?正気か!?ヤツは現役の殺し屋では世界No.1と言われている。ヤツに狙われて助かったヤツはいないぞ」
香「ガーラントって、そこにいる女刑事を殺しに来たんでしょ?さっさと仕事して帰っちゃえば良いのに!」*冴子が同室にいるというのにこのセリフは酷い
冴羽「香!どうして来た!?」
香「この目で見届けたいんだ!兄貴ん時みたいのは嫌だ!」
次回予告
冴羽「香、大事件だ!」
香「何だ、どうした?」
冴羽「海坊主が女に惚れた!」
香「え!?えらいこっちゃあ」
冴羽「だろ?ヤツめプレゼントまで用意して、何と相手はとびっきりのピアノ美人」
香「うひょお~」
冴羽「しかも、彼女には影がある。事件のニオイがプンプン……」
香「もぉ……ビックリし過ぎて腰抜けちゃった……」
冴羽「うふっ。俺ちょっかい出しちゃお。シティーハンター『がんばれ海坊主!!ハードな初恋協奏曲』」
香「絶対見てね!」
スタッフ
脚本 | 遠藤明範 |
---|---|
絵コンテ | 網野哲郎*3 |
演出 | 今西隆志 |
作画監督 | 谷口守泰 |
原画 | 逢坂浩司/野中幸/小森高博/小川瑞恵 |
動画 | 網野佳子/島田悌三/岩長幸一/アニメ・アール/たくらんけ/スタジオ 天 |
動画チェック | 石井康雄 |
色指定 | 横田政一 |
仕上 | スタジオ九魔/米村貞子/奥野孝一/公平保之/岩沢れい子 |
特効 | 千場豊(マリックス) |
背景 | スタジオ・イースター/矢島洋一/北川晴美/清水隆夫/南沢貞子/影山誠哉 |
撮影 | 旭プロダクション/長谷川洋一/末弘孝史/福田寛/土岐浩司 |
編集 | 鶴渕映画 |
タイトル | マキ・プロ |
効果 | 松田昭彦(フィズサウンド) |
整音 | 大城久典 |
音響制作 | オーディオ・プランニング・ユー |
録音スタジオ | A・P・Uスタジオ |
現像 | 東京現像所 |
メカニカルデザイン | 明貴美加 |
設定 | 秋山浩之 |
制作助手 | 渡辺葉子/佐藤あさみ |
制作進行 | 南雅彦 |
文芸 | 外池省二 |
製作担当 | 望月真人 |
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