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主にテレビドラマや時代劇、アニメの感想文を書いているブログです。

必殺仕事人V旋風編 第13話「主水、化粧する」

江戸の若者たちの間では、派手なメイクと着物を着て"ホコ天"で遊ぶのが大ブーム。高島藩御金蔵方・藤尾欽兵衛(有川博)の息子、欽太郎(山本陽一)もその一人。友人の今千之丞(江端郁世)と一緒に行う強請り集りお構いなしの悪童ぶりに、おりん(桃山みつる)と千代松(遠藤太津朗)も大迷惑を被る始末。

さて、その高島藩では、勘定方・宮崎一学(北原義郎)一派が藩金を使い込み五千両を焦げ付かせてしまう。欽兵衛には「藩金増額のための資産運用に失敗した」と嘘の報告をするが、真に受けた欽兵衛は、御金蔵に盗賊が入り込んで盗まれたと一芝居打つ事を提案。火盗改与力・佐藤小十郎(有川正治)の手引きにより、計画を進める宮崎たち。盗賊役をどうするかの選定に、ホコ天で能天気に遊ぶ「生きていても仕方がないチンピラ」を使うことに。

チンピラを片っ端から補導する火盗改メ。奉行所も遅れを取るまいと躍起になるが、その最中、過去の悪事が祟って補導されてしまう欽太郎と千之丞。盗賊役の選定を行っていた宮崎一味の一人は、欽太郎に目を付け悪巧み。政(村上弘明)に御金蔵のカギを作るよう依頼し、欽太郎にはその預かり書を渡して釈放。千之丞の「その合鍵があれば(お金を)使い放題だな」の軽い誘惑が悲劇の引き金となってしまう。

家へ帰ると欽兵衛が待っていた。自分の悪事を簡単に考える欽太郎に対し、父親の威厳で叱りつける欽兵衛。「小遣い無し」と言われ不貞腐れる欽太郎。「子供に恥をかかすんですか!?」と自分勝手な理屈を唱えて暴れまわるが、そこで思い付くのが合鍵の預かり書。一方、欽兵衛に惚れているお玉(かとうかずこ)は、父子家庭の子育ての難しさを理解した上で「親の期待が重過ぎるのが、今回の悪事に至った原因なのでは?」と欽兵衛を諭す。その気持ちに強く打たれた欽兵衛は、お玉に後日お礼がしたいと申し出る。お玉も満更ではないが、欽太郎の様子がおかしいと後を付けると、政から合鍵を受け取り高島藩御金蔵へ忍び込まんとする欽太郎を発見する。本当に御金蔵へ忍び込むとは思わなかった千之丞は逃げ出すが、欽太郎は金を盗んでしまい、待ち構えていた宮崎一味に殺され、父・欽兵衛も共謀の罪を着せられ親子揃って謀殺されてしまう。

宮崎たちを仕置にかける主水たち。しかし警備が厳重だ。知恵を出す主水。「もう一度御金蔵破りがあると吹き込み、一同揃ったところを殺っちまえば良いんだ」。政たち仕事人は盗賊となり、蔵へ悪人をおびき寄せ見事仕置を完了させる。

後期必殺シリーズのメインライターである吉田剛が、ここにきてようやく脚本を担当。このあとの最終回も手がけているが、すぐあとの『必殺仕事人V風雲竜虎編』の2話まで吉田剛が手がけているため、この話をあわせて合計4話分を執筆していることとなる。ここまでいささかブレがちだった旋風編の内容だったが、ここにきてぐっと引き締めたものに仕上がっていて、なかなか見応えのあるエピソードとなっている。

さて、今回は歩行者天国で遊ぶ無知で無鉄砲な若者たちが、藩金使い込みの発覚を恐れる大人たちに騙され、無残にも命を散らすというお話。ビジュアル的には、同時期に劇場公開として製作された『必殺!4 恨みはらします』の旗本愚連隊のような衣装を着た若者たちだが、親の心配をよそに、楽しければそれで良いと遊び惚ける姿は、狡賢い悪人たちからすれば、まさに「生きていても仕方がないチンピラたち」であり、利用するにはもってこいの連中である。

悪人の嘘を真に受けて、その穴埋めに一役買ってしまう馬鹿正直な御金蔵方の役人。その息子が、これまた頭の悪いチンピラという、悪人からすればいとも簡単に利用できそうな恰好の獲物が今回の被害者。父子家庭による家庭不和をうまく利用し、息子に誘惑のエサとして御金蔵の鍵を与え、蔵破りを仕向ける狡猾な手口。それは、実際に蔵へと忍び込んだ息子だけでなく、その親にまで責任を取らせて口を塞ぐことで、悪人たちにとっては完全犯罪となるはずだった。お玉の尾行がなければ、恐らく悪事の糸口はつかめなかったことだろう。

スタッフ

脚本 吉田剛
監督 原田雄一

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