眠狂四郎 円月殺法 第10話「はぐれ三味線運命剣 -蒲原の巻-」
凶賊・五郎蔵(沢竜二)の片腕を斬り落とした狂四郎(片岡孝夫)だが、食い詰め浪人である疋田(千葉敏郎)ら三人にも囲まれ波乱の展開。蒲原宿に着いた狂四郎は、サイフを盗まれた都田(岸部シロー)がタダ働きをしている女郎屋・扇屋に泊まる。扇屋の女主・おとは(山田五十鈴)が奏でる、生き別れとなった息子を想う三味の音に、遠い昔を思い出す狂四郎であった。
五郎蔵一味の少年・鶴吉(片岡孝太郎)は江戸の大火の中で五郎蔵に助けられ育てられていた。その恩義から悪事に加担していたが、母に会いたいと強く願う純粋な少年でもあった。何度となく悪事から足を洗うよう狂四郎に忠告される鶴吉であったが、宿場役人の手入れを受けた際、追われる五郎蔵を救うために役人一人を刺し殺してしまう。おとはが少年から「鶴吉」の名と柳橋の生まれであることを聞いて、彼が生き別れの息子だと確信した矢先であった。
五郎蔵は残った手下たちと蒲原を離れる前に一仕事することに。押し入った先で見たものは、疋田ら三人の浪人が住人を斬殺したところであった。両者が鉢合わせた場に現れたのは都田。それぞれ狂四郎に強い恨みを抱くことから、彼らを結託させ狂四郎を始末させる作戦に。しかし円月殺法には通用しなかった。
鶴吉には死罪の判決が下った。おとはと鶴吉、お互い母子であることは分かっていた。しかしあえて母子の名乗りは上げず「もし生まれかわってくることがあったら、私の子になっておくれ」「もし俺のおっ母を知っていたら、伝えて欲しいんだ。すまねえ、先に逝ってすまねえ、って。そして、てるてる坊主を、雨が降ったら吊るしてくれ、って」……おとはの三味の音を聴きながら、狂四郎は何を思うのだろうか。
大女優・山田五十鈴、そして片岡孝夫の実子・片岡孝太郎と大変豪華なキャスティング。悪役には、大衆演劇の重鎮・沢竜二を迎えた。
親と子の巡り合わせと、救われぬ悲しい別れを描く。悪事に加担しつつも、いまだ知らぬ母への純粋な想いを抱く少年・鶴吉。冒頭庄屋宅へ押し込むも、逃げてきた女たちに「早く逃げろ」と声をかける根は真っ当な少年。その少年に、何度となく出会う狂四郎は、悪事から足を洗うよう諭すのだが、鶴吉の居場所は五郎蔵の懐にしかなかった。一方、御家人を辞め江戸より浪々の身となった浪人たちからも恨みを買う狂四郎。彼らは天然理心流の使い手だそうだが、最後には盗賊にまで落ちぶれてしまう情けない連中である。
狂四郎が厄介になる女郎屋「扇屋」の女主・おとは。山田五十鈴が演じており、もちろん三味線の演奏シーンもあり。子を想う母の三味の音に呼応した狂四郎、自分の生い立ちを思い起こす。生き別れの子供が作った「てるてる坊主」をいつも軒先に吊るしているが、それこそ鶴吉が作ったものであったのだ。鶴吉自身もそれを覚えており、この「てるてる坊主」が母子を繋ぐキーアイテムとなる。
蒲原宿の宿場役人は優秀なようで、五郎蔵手入れの際にもいくらかの功績を挙げている。その捕物の際、鶴吉は役人を殺してしまう。15歳であるため、本来ならば若年者による犯罪で罪一等を減ずるはずなのだが、「今後の見せしめのため死罪」という非情な判決が下る。市中引き回し。その姿に辛さを噛み締めるおとはであったが、狂四郎が今生の別れの場を設ける粋な計らいを見せる。救われぬ親子の定めに、蒲原宿を後にする狂四郎の表情も暗いままであった。
キャスト
五郎蔵:沢竜二/鶴吉:片岡孝太郎/丑松:丹古母鬼馬二/疋田:千葉敏郎/小栗:山本一郎/若松:浜田雅史/清二:下元年世/百助:日高久/お松:宮本毬子/芝本正/真田実/加藤正記/絹川美智子
おとは:山田五十鈴
スタッフ
企画 | 神山安平(テレビ東京)/大塚貞夫(歌舞伎座テレビ) |
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プロデューサー | 犬飼佳春(テレビ東京)/小久保章一郎、沢克純(歌舞伎座テレビ) |
原作 | 柴田錬三郎「眠狂四郎孤剣五十三次」より(新潮文庫版) |
脚本 | 和久田正明 |
音楽 | 岩代浩一 |
撮影 | 中村富哉 |
美術 | 太田誠一 |
制作主任 | 黒田満重 |
照明 | 南所登 |
録音 | 田原重鋼 |
調音 | 本田文人 |
編集 | 河合勝巳 |
装飾 | 玉井憲一 |
記録 | 川島庸子 |
装置 | 松野喜代春 |
進行 | 大志万宗久 |
助監督 | 木下芳幸 |
殺陣 | 楠本栄一 |
特技 | 宍戸大全 |
ロケ協力 | 大覚寺 |
装置 | 新映美術工芸 |
床山・結髪 | 八木かつら |
衣装 | 松竹衣装 |
小道具 | 高津商会 |
現像 | 東洋現像所 |
ナレーター | 佐藤慶 |
制作協力 | 京都映画株式会社 |
プロデューサー | 佐々木康之 |
監督 | 家喜俊彦 |
製作 | テレビ東京/歌舞伎座テレビ |
次回予告
眠狂四郎の行く手を阻む刃の嵐。修羅場の中で無縁人が巻き添えに。泣き叫ぶ幼子。母に会える日を小さすぎる胸に、無常な定めの中で必死に耐え忍ぶ幼子。「冥途の土産に、円月殺法ご覧にいれよう」
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