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主にテレビドラマや時代劇、アニメの感想文を書いているブログです。

必殺からくり人 富嶽百景殺し旅 第1話「江戸日本橋」

天保4年夏。「江戸もくだらねえ町になりやがった」と愚痴を吐きつつ親子で引越しをする葛飾北斎小沢栄太郎)。馬喰町に着いた途端、娘のおえい(吉田日出子)を放り出し、一人で天保太夫一座へ向かう。その間、滝沢馬琴(北村英三)の家で過ごしその苦境を訴えるおえいは、馬琴から新たな仕事を持ちかけられる。一座が役人に踏み込まれて解散し、お栄のもとへ戻ってきた北斎は、馬琴の紹介で版元・永寿堂与八(岡田英次)に出会う。

永寿堂から、安藤広重が描いた「東海道五十三次」の絵を見せられた北斎。敵意をむき出しにするが、永寿堂は北斎に五十三次の絵がなぜ売れるのかを解説する。「殺しのニオイ、血の香りがするからさ」そう言って絵を火鉢にかざした途端、ある部分が赤く浮かび上がった。そして改めて永寿堂は北斎に仕事を持ちかける。それは、北斎が大勢知っている、法の網を潜り抜け生きている極悪人を絵に忍び込ませた「富嶽百景」の制作だった。「富士には殺しがよく似合う」北斎は、南蛮の絵の具「ベロリン」を使い制作に乗り出す。

さて、劣情を催す過激な公演で江戸御府内追放の裁きが下ったお艶(山田五十鈴)率いる天保太夫一座の面々。芝居小屋の跡地に戻ると、若い男が待ち構えていた。演目の最中、お艶たちの動向をじっと見つめていた男だ。昨年の東海道五十三次殺し旅のことを知る男に警戒するお艶たちだが、そこに現れたのは、北斎に仕事を持ちかけた永寿堂であった。永寿堂は殺し屋の元締でもあり、男・唐十郎沖雅也)はその配下だった。広重の五十三次殺し旅を完遂させたお艶たちに、今度は北斎富嶽百景殺し旅を依頼する永寿堂。唐十郎を仲間に引き入れ、最初の仕事「江戸日本橋」に取り掛かる。

津軽藩御用達の井筒屋藤兵衛(山岡徹也)は、三味線の中にアヘンを隠した越後瞽女を江戸に呼び寄せ、米蔵で奉行所の奉行次席をはじめ江戸の名だたる名士たちをアヘン漬けにし意のままに操っており、用済みになった瞽女は容赦なく殺害していた。この事実を確認したお艶は、瞽女に扮して井筒屋の蔵へと潜入。悪人たちを一網打尽に始末する。

前作『新必殺からくり人東海道五十三次殺し旅』の続編。一年が経った設定となっている。メンバーは変わっているものの、永寿堂が「泣き節お艶さん」と呼んでおり、メンバーはそれぞれ同一人物で間違いないだろう。ただし、ブラ平→宇蔵は理屈が通るが、鈴平、うさぎの二人は前作には参加していない。とはいえ、お艶が「長年一緒にやってきた、やり方というものがございますからね」と言っていることから、彼らとの付き合いも長いと思われる。

さて、今回殺しの依頼図を描くのは葛飾北斎。広重は「幕府の隠密」という一面を孕んだ分、最初から何か含みのある態度を取っていたが、北斎は好きな絵を描くことと、南蛮絵具「ベロリン」を手に入れるためなら何でもする男で、むしろその北斎を誘惑した永寿堂のほうに何か意図があるようである。唐十郎も、今のところ腕は立つものの、一座とは一歩引く形で描かれており油断できない存在となっている。

話の展開は、前作と同じく江戸を追放されるところから始まる。芝居小屋も徹底的に破壊されるくだりも同じだが、新からくり人のような感傷的になる演出は無し。それどころか、芝居小屋が破壊され乾いた荒野の廃墟となったこの場所で永寿堂からの依頼を引き受けるわけで、そのときの演出として画面を五分割にしたり、荒んだ風を送るなど細かい工夫が見られる。

脚本は、山田五十鈴主演のからくり人シリーズを手掛けてきた早坂暁が今回も担当。しかし、本作において早坂は第1話のみの参加に留まっている。監督は黒木和雄必殺シリーズ初参加ながら、馬琴が住む長屋での庶民の生活、殺しのシーンでの宇蔵と唐十郎の反目し合った出会い、殺しが終わったあと燃え盛る蔵を背景に殺しの余韻を残す唐十郎、助けた瞽女を引きつれながら歩くお艶のシーン…など、独特の手腕が遺憾なく発揮されている。

「江戸日本橋

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右から5番目。「¬+井」の蔵が赤く染まる。

阿片窟

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地獄めいた阿片窟の様子を、この二つの絵を使って表現する演出を行っている。

脚本 早坂暁
監督 黒木和雄

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